nicht seinの読書感想文

漫画やアニメ、同人誌の感想やらなんやらを細々と残そうかと。

少し長くなるので、日記に書いてみる

まず最初に、わたしも単なる弱小サークルの中の人なだけなので、イベント運営のことや大手の実情について詳しいわけではないことを前もって言っておきます。
以下の記述はわたしの想像と妄想に基づくものなので、現実とは異なっている可能性もあります。
意見等ありましたら、遠慮無くコメントしてください。
ただし、中の人が絶賛お仕事修羅場中なので、返答は遅れる可能性があります。


http://d.hatena.ne.jp/kbjing/20080505#p3
kbjingさんがコミティア壁大手の本を買えなかったことをきっかけに、「同人誌が欲しい人に行き渡らない現状をどうにかするべきでは」と問題提起しています。

(P2Pなどによる違法行為をしないよう)
ただ、それをいうには多くの読者に作品を提供するためのシステムが整っていないんじゃないかと思っただけで。部数が少なすぎて、読めない人がたくさんでてしまっているわけだし

http://d.hatena.ne.jp/kbjing/20080505#p3

kbjingさんは欲しい人全員に行き渡るように印刷すればいいじゃないか、と思われているかもしれませんが、そもそも論として個人で行っている同人誌に「多くの読者に作品を提供するためのシステム」はそんな簡単にはいきません。

第一の理由として、壁大手ほどのところになると、一度のイベントで全員分を用意するとなると搬入量の制限に引っかかってしまいます。壁の部分を使えるとはいえ、一つのサークルのスペースには制限がありますし、また印刷会社の運送量にも上限があります。正確な値は不明ですが、数千が限度、と以前どこかで読んだ記憶があります。

また、頒布アイテムがコピー本だった場合、時間や人手的な問題で、物理的に数十冊制作するのが精一杯ということもあります。

第二の理由、そして、こちらがほとんどの場合主な理由になるわけですが、同人誌は自主制作なわけですから、当然印刷代は自分持ちです。売れなかった在庫は自分管理です。
うちみたいな弱小でしたら全部売れ残ったとしてもせいぜい100冊程度で、自室の隅に山積みにしておけばまだいいですが、大手になればなるほど、「全員に行き渡るように」と作れば、余ってしまう冊数の桁も増えていきます。とらのあななどの書店卸に出しても、結局三ヶ月程度すぎれば余った本は売れ残りとして戻ってきてしまいます。
大量に刷ると印刷費もバカにならない上に、見込み違いで作った本が大量に戻ってきたら、どうしようもありません。
商業印刷のようにある人の著作が失敗しても、他の作者の本で損失を取り返す、ということが本質的に難しい同人誌では、これらのリスクを避けるために、需要を下回る数しか作らず在庫をなるべく作らないようにするのは、仕方ないのではないでしょうか?

究極的な解決法として、「在庫リスクのない電子媒体に変更する」というのもありますが、これにも問題があります。
電子媒体だと、現状ですとどうしてもとらのあなDLSite.COMなどのダウンロード販売サイトを利用することになり、読者の人に直接手渡しすることはできません。また、同人誌即売会イベントなどで頒布することもできません。
また、電子媒体は紙に比べて解像度が落ちたり、液晶だと製品によって同じ色でも全然違う色に見えてしまったりと、頒布媒体としてもまだまだ問題が残っています。

その他にも、これはケースバイケースですが、「描きたいから描く」だけで、大勢の人に観て貰いたいという欲求が作者の方にそもそもなかったりした場合などは、欲しい人全員分に作品がいきわたることはないでしょう。

ということで、開始20分で売り切れという状況は作者個人が一朝一夕に解決できるものでもないし、その責任を作者本人に押しつけるのも違うし、解決されないからって違法行為に手を染める正当性にならないっていうお話でした。

追記(2008/05/26)
初期にこの記事を紹介してくださったA@さんが良記事を書かれています。
欲しい同人誌が買えなかった、そんな楽しい一日。
ここで、議論している方にも是非御一読してほしい内容だったので、追記しました。