nicht seinの読書感想文

漫画やアニメ、同人誌の感想やらなんやらを細々と残そうかと。

ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。

どうしてこの町がすべてを合わせて一つの神社なのか。
空から見た時、この町を間違えないように。
この町のどこに降りても、あなたの神社であるように。
伝えようとしていたんだ。
嬉しかったんだと、助かったんだと、気持ちを相手に届けるために。

今月創刊の一迅社文庫から。
巫女である自分に誇りを持っているツンデレなヒロインのいちこと、何故か水難に遭うヘタレ主人公、輪。それとタイトルにもある会話が成り立たない不思議少女のアネモイ。と、エロゲーで有名な方らしく、キャラ立てはばっちりです。
とくにヒロインのいちこはいいですねっ。巫女でストレートロングで、幼なじみで、主人公に対してだけサドで、でも、それは実はちゃんと訳があって内心は普通の女の子――とにかく細かな所作で主人公の輪のことを気に掛けているのがばればれで、アネモイとのキャッチボールにならない一人相撲なんてにやにやしっぱなしでした。
「お見合い」という奇妙な祭りの最後で明らかになるアネモイの想いと、「見失っていたもの」を見つかる流れは凄く綺麗で、読後感も本当に良かったです。
ただ、「何故、輪がそこまでかたくなになったのか」が余り語られてなかったために、前半の輪の父親との不仲やそのいじけっぷり、水難を避けるあまりのへたれっぷりが、違和感を感じてしまったのが残念でした。特に何もしていないどころか良い人なのに嫌われちゃってる父親が可哀想すぎる。

それにしても、一迅社文庫ってどうしてこんなに文字が小さいのかな?
文字のサイズの割に行間は空いているので、詰め込んで安くする、ってわけでもなさそうだし。
読むのに少し疲れてしまう小ささなので、年寄りにはちょっと辛いです。